実績

CASES

Case #1

ディープラーニングは
キラーワード?!

プロジェクト:風力発電メンテナンス支援システム構築

クライアントは、創業以来、多数のスペシャリストを抱えて運用するナレッジサービスを展開してました。
二十有余年に亘るサービス運用を経た今、その人力対応によるリソースコストと蓄積された膨大なナレッジデータに鑑みる時、サービスのITシステム化は必然の流れでした。
その際、最先端ITの代名詞に等しいディープラーニングAIの導入を同じく必然とする流れも初の大規模IT化に臨む同社としては自然なものでした。
とりわけ経営層は「ディープラーニング」というキーワードに目を輝かせていました。

ところが、AIというだけでも十分な理解が及ばないところに加えて、ミーティングの度にディープラーニングのスペックだのデータ分析の手法だの説明されても、自分の情弱ぶりを痛感させられるばかり、と遂行責任者は途方に暮れていました。
「ディープラーニングAIによる」という謳い文句だけでサービスの価値訴求力が向上すると信じて疑わない経営層のスタンスに沿って、最も高額な見積もりのベンダーへの発注が決まろうとする頃、当社がお声掛けいただきました。 「本当にこれで良いのだろうか」という遂行責任者の懸念からのご相談でした。

遂行責任者が当社を知ることになるきっかけは、同社が過去に経営改善を委託した実績のあるコンサルタントからの紹介でした。
遂行担当者からその抱える苦悩を相談されたそのコンサルタントの言葉は、「面白いスタンスで相談に乗ってくれる連中がいるから、スポットで首を突っ込んでもらってみたら?」というものだったそうです。
その物言いにも興味を惹かれた遂行ご担当者からの依頼は、「1か月間、社内、社外の会議体に同席して、思うところをアドバイスして欲しい」というものでした。

初めの2回のミーティングでは頷いたり、笑顔で相槌を打つばかりでしたので、遂行ご担当者としては「軽くカモにされた?」くらい思っていらしたかも知れません。
ですが、「黙って耳を傾ける」ことの効能は大きく、根源的な課題がはっきり見えました。

3回目のミーティングの際、「今更の論点と思われますし、空気を読めとお叱り受けるかもしれませんが、本件システム化でAIにディープラーニングを採用する理由、必要性、優位性をどなたかご説明頂けませんか?」と発言したところ、会議体が凍り付きました。
「こいつ、何を今更なことを言ってやがるんだ!?」と思った出席者もいたかもしれませんが、誰一人としてその回答を持っていないということははっきりしました。

皆が「それは暗黙の共通認識」として、触れずに(各々が自分に都合の良いように)納得していただけであり、発注側と受注側の間で絶望的な認識齟齬があったのです。

「誰がディープラーニングと言い出したのか」、そんな犯人捜しは不毛なので、「やりたいことは何か」と「それを実現するために必要なものは何か」から要求事項を精査する音頭を取らせていただきました。(オブザーバーとしては少なからず越権との認識には苛まれましたが…笑)

集中的な社内ミーティングの結果、深層学習はオーバースペック(遠慮無い表現をするならば「不適格」)であり、狭義の機械学習こそが最適解だという総意に辿り着きました。

発注先は、実績から判断して結局最高額の見積りを提示していたベンダーを選定しましたが、このAI仕様の最適化により、開発コスト、運用(特にAIメンテナンス)コスト共の大幅圧縮、投下資本回収計画の上方修正が実現できました。

当案件に於ける弊社の作業範囲は、「要求事項の整理」、「AI(データモデル)の評価/設計支援」、「利用時要求品質の定義支援」と広範なものとなり、ひと月だけの予定であった「併走」は成果物の受入試験完了までの長距離走となりました。

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Case #2

人工知能は競争優位のコアに

プロジェクト:スタートアップにおける技術設計と資金獲得

クライアントは、公的助成金の獲得を目指すスタートアップ企業でした。 弊社の参画は、助成金獲得が難航し、起業から半年経たずに継続可否の判断を迫られる発起人からのヘルプ要請がきっかけでした。
助成額が大きい「革新的技術」を要件とする公的助成にエントリーするものの、落選を積み上げるだけの現状に立ち上げメンバーは等しく自信を失っていました。

事業計画の説明を聞く限り、ビジネスモデルもしっかり練りこんで設計されていて、回収計画も現実味を感じられるものでした。
にもかかわらず、なぜ獲得できないのだろう・・・?
メンバーの頭の中はその論点だけで一杯の状態でした。

しかし、十分な説明を受けたにも関わらず、一向にわからないことがひとつありました。
「この事業に含まれる革新的技術って何ですか?」と尋ねると、「画像解析AIによる対象物の認識です」との答えでした。
思わず「正気ですか?」と反応してしまいました。

今や、高精度のセマンティックセグメンテーションを実現する画像解析は、クラウドサービスとして数多く提供されています。
この状況下で、評価する側の専門家をして「革新的」と言わしめる要素が本件事業計画からは読み取れません。
そもそも、その高い精度の画像解析をもってしても、本件サービスのアウトプットの妥当性が担保されるとは考えられませんでした。

そこで「端的に、そのAI(画像解析)が革新的と言えないと言われてるだけなのではないですか?」と発言すると、メンバー全員が顔を曇らせました。
「そんなことは言われなくてもわかっている!」と言わんばかりに・・・

「画像認識を実装しないと何が起こりますか?」と尋ねると、「対象物が何であるかを利用者が入力することになります」との答え。
「それは、長文の説明を要するものですか?」と尋ねると、「いいえ、一般的な名称を入力するだけです」との答え。
「そもそもの質問で恐縮ですが、本件サービスの優位性って、『対象物が何であるかの先にあるアドバイス』の部分にあるのではないですか?」と問いかけると・・・
サービス利用者の一手間を減らすことを重視し過ぎた結果、皆が視野狭窄、思考停止状態に陥っていたことに皆が気付いた瞬間でした。
それは、事業計画を「ちゃぶ台」ごとひっくり返した瞬間でもありました。
言い換えると、弊社の作業範囲が爆発的に拡大した瞬間でした。

『対象物が何であるかの先にあるアドバイス』は、ルールベースでシステム化する構想でしたが、正解データが十分に存在していること、データ分析による特徴点抽出も難儀ではないことから機械学習AI化することに方針転換し、類似競合が存在しないことから革新性のアピールが格段にし易くなりました。
この設計部分を弊社が主導した経緯から、評価委員会の場で大手ITベンダー出身の優秀な専門家のお歴々から矢継ぎ早に繰り出される(意地悪な)質問に応答するプレゼンターまでお任せいただいたのは想定外ではありましたが、(冷や汗と苦労の甲斐あって)無事、革新的技術の認定と助成の獲得ができました。

当案件に於ける弊社の作業範囲は、「事業計画の評価」、「AIの設計支援」、「技術情報の文書化/特許申請の支援」、「プレゼンテーション」と甚だ広範なものとなりました。

余談ですが、当案件のようにメンバーが総じて視野狭窄や思考停止に陥ることは、殊更AIが絡むサービス、事業の設計の際にしばしば起こる傾向があるように感じます。
「どこをAIにするのか」、「どんなAIにするのか」、「なぜAIの必要があるのか」・・・
人工知能というだけあって、「AI」というキラーワードは人間を簡単に思考停止にしてしまうのかもしれません。

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Case #3

「聞いてない」V.S.
「わかると思ってた」

プロジェクト:ウェブサイトリニューアル(実は基幹連携)

クライアントは、大手製薬グループ傘下の食品製造販売企業でした。 弊社の参画は、消費者向けウェブサイトのリニューアルを担当するウェブ制作会社からの「モヤっとした」ヘルプ要請がきっかけでした。
「クライアントのRFPに応答して選定された提案をベースにしてるのに、会議体が成り立っていない」との物言いに、甚だしいコミュニケーションエラーを確信しました。

「とりあえず、一度、クライアントミーティングに同席して欲しい」と言われ、客先の豪奢な会議室のテーブルに着きました。

クライアントは日本国民なら誰もが知る大手企業、いわゆるナショナルクライアントです。
ご担当者の「情報が欲しければ取りに来い、理解したければ教わりに来い」と言わんばかりのご尊顔が会議体の円滑な進行の妨げだなと思いつつ黙って様子を窺っていて、わかりました。
その会議体には、「互いの言語を解さない者同士の対話」しか存在していなかったのです。

ウェブ制作会社がRFPを受領してから提案を完了するまでの間対話していた相手は、クライアントの消費者向けウェブの担当者でした。
同じウェブのレイヤでモノを考える者同氏でもあり、意思疎通は至ってスムーズだったようです。
しかし、受注確定後に右ウェブシステムが実は基幹システムと連携するものと知らされ、青天の霹靂の真っ只中、目の前の対話の相手は基幹システムの担当者です。
言うなれば、基幹システムと業務システムの連携の難度を累乗したような混沌の中にあったわけです。

しかし、それが判れば現状課題の解決自体は簡単ですし、オブザーバーという弊社の立場を活かせる場面の到来です。

「すべてが他人事の立会人としてお話伺っていて、この場に共通言語が存在しないことに気付かされました。つきましては、取り急ぎ、最優先作業として『共通言語の構築』をすべきものと思料いたしますが、如何でしょうか。」
具体的に言えば、「厳格な用語辞書」を作りましょうという話です。

「ポッと出の得体のしれない奴がなに余計な仕事増やそうとしてるんだか」という雰囲気も、品質管理や品質保証も用語定義の礎の上に成り立つことを説明すると即座に解消されました。
その場で用語辞書作成チームが結成され、その後幾度かのリスケは経ながらも無事のリリースに漕ぎつけたと感謝の言葉とともに連絡を受けました。

当案件に於ける弊社の作業範囲は、「会議体への同席」(それも一回)だけという小さなものでしたが、不思議なことに達成感はそれに反比例する大きなものとなりました。

余談ですが、当案件のように共通言語の不在が明らかな場合は、まだ幸運と言えます。
「似て非なる用語」が勘所に散在していて、その微妙でありながら決定的な意味の違いを担当者が思考の柔軟性で埋めてしまうような場合は、当事者では気付けないことが多く、結果が出るまで不運に気付かれないことが多い気がします。
「暗黙知」、「当たり前品質」もそうですが、「大丈夫、みんなわかってるから」で済ませてはいけないものがたくさんあります。

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